01. AFTER
02. 千日紅-ひと夏の夢
03. Rianon
04. ふるさと
05. 光と風の道
06. 月の雫
07. 心の中のひと
08. 埴生の宿
09. 迷宮の丘
10. 寝顔
11. 哀しみの果てに
12. 手紙
13. ジェラシー
14. 再会
15. 寝 顔
馬島昇
12回目を迎えるというこのコンサートは、神社が舞台というだけあって
今までは邦楽が中心だったらしい。因みに前年は津軽三味線だったという。
そしてこの年の出演が急遽私に決まった。
コンサート当日は荘厳な雰囲気の中、静かな昂揚感があった。
リハーサルの途中激しい夕立がありリハは一時中断する。
つい先ほどまでのけたたましい蝉時雨は、いつのまにか雨音に変わっていた。
やがて雨は小降りになり、そして完全に止んだ。
どこかに隠れていた蝉たちが、再びけたたましく鳴き始めた。
風は・・・今度は我々に向かって吹き始めたようだ。
15分押しで、いよいよコンサートの火蓋が切られた。
かがり火の炎が勢いよく燃え上がる。やがてその煙は
ステージの照明と溶け合いスモークの役目を果たし始めた。
3曲を弾き終えると、いつのまにか会場内は-静寂な夜の海-のように
静まり返っていた。そして中盤の「心の中のひと」あたりから、会場の密度が
ぐっと凝縮されてくるのを感じた。「哀しみの果てに」そして新曲の「寝顔」と
3曲続けて弾き終えた頃には、会場全体がある種のオーラに包まれているような
感覚に陥った。
「今日は何かが降りてきています」と私はステージで冗談交じりに話していたのだが
実はこの時けっこう真面目に言っていたのである。波動の高い何か目に見えない存在が、暖かく会場を見守ってくれているような気がした。
気が付くと私はいつになく寡黙になり、次々とギターを持ち替えながら完全に一人の世界に没頭していた。もはや言葉など必要ないのだろう。そのことは客席の表情からも
うかがい知ることができた。